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何も考えない贅沢な大人の時間を。独身貴族がおすすめする漫画『町田くんの世界』 | 独身貴族

何も考えない贅沢な大人の時間を。独身貴族がおすすめする漫画『町田くんの世界』

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休日に観る映画もいいですが、難解な物語を追い掛けるのに多少のストレスを感じたことはありませんか。逆に、景気良く「やたら火薬の出番が多い映画」を観るのは?観終わった後に、「結局この映画は何だったんだろう?」と自身の映画選別眼のなさに飽きれてしまう…とか、映画を観るのにもいろいろありますね。
 そこで独身貴族が提案。趣向を変えて漫画を読むというのはいかがですか。普段から漫画を読む方は自分の好みではなく他からおすすめされた漫画を、普段漫画を読まない方、久しく読んでいない方は童心に返って漫画をまとめ読みする、というのはどうでしょうか。きっとあなたの守備範囲を越えた物語、キャラクターたちに出会えると思いますよ。
今回は独身貴族が胸を張っておすすめする、男性向けでもない、女性向けでもない「何も起こらないが起こる」不思議な漫画「町田くんの世界」をご紹介したいと思います。




引用:町田くんの世界
町田くんの世界(全7巻)
予算 3,080円(税抜き)

 

Contents

漫画が育つ国・日本

独身貴族の皆さんは、どんな漫画との歴史がありますか?

あなたはどんな漫画が好きでしょうか、またその昔どんなストーリーに夢中になったでしょうか。例えば、人を越える特殊な力を持ったヒーローが悪者を次々となぎ倒す話とか、弱小野球部が猛特訓して甲子園で大活躍する話とか。はたまた、美男美女でありながら幾度もすれ違い、なかなか恋を成就できない切ないラブストーリーだとか、完全犯罪をたくらむ殺人鬼のトリックを暴く探偵ミステリーとか。何かこれを読んでいるだけでもワクワクしてきませんか。

大人になった今こそ、漫画を読んで欲しい!

漫画っていいですよね、私は大人になった今も大好きです。作品によってはストレス発散になったり癒しにもなったり。今は青年漫画や成人漫画という言葉もあるくらいですから、大人が読む漫画も一定の社会権を得たということでしょうか。漫画は忙しい現代人の心の衛生を充足させる、そんなコンテンツの一つにまで成長したと思うのです。

漫画の歴史は?

ふと見回せば、どんな新聞にも雑誌にも四コマ漫画や歳時記のような漫画が掲載されています。新聞の難しい政治面で目にする風刺画さえも一コマ漫画の一種なのですから、ある意味、社会全体が漫画を影響力のあるものと認めているのだと思うのです。手塚治虫や長谷川町子は漫画を描いて国民栄誉賞をもらっていますし、国策としてのクールジャパンは「ジャパニーズアニメ」や「manga」にも大きく焦点を当てています。

世界の大人達も魅了される漫画

漫画の表現方法も随分と変化して来ているように思えます。漫画から派生したとり・みきや江口寿史、わたせせいぞうの商品としてのイラストにも「ハイセンス」や「お洒落」の文字がよく充てられています。そういう意味で日本は世界でも類を見ない「漫画が育つ国」なのだと思うのです。

独身貴族がおすすめする漫画『町田くんの世界』に見る平凡な異質


引用:町田くんの世界

定番漫画の魅力とは?

漫画の魅力の一つは、ヒーローものにしても恋愛ものにしても「ハラハラドキドキ」がキーワードなのだと思います。次回も続けて読みたいと思う心理、それが次号・次巻も手に入れたいという購買欲につながり、漫画(雑誌)の発行が商売として成立しているのだと思うんですね。

大人にこそ読んで欲しい漫画『町田くんの世界』は、一味違う

今回独身貴族がおすすめする漫画『町田くんの世界』にはそのハラハラドキドキがほぼありません。いわゆる「いかにも漫画らしい」事件がほとんど起こりません。多少俯瞰すれば、漫画らしさ成立させる物語はあるのですが、それは読者にだって起こり得る日常レベルの物語ばかりで、他の漫画に見られるハラハラドキドキする「漫画物語」は起こらないのです。漫画『町田くんの世界』では事件が起こらないのが普通であって、気取った表現にはなりますが、「何もないがある物語」があるだけなのです能動的にそんな何もない時間に触れられるのはとても貴重な体験なのでは…と思うんですね。

大人を魅了する主人公・町田一(まちだはじめ)とは

主人公・町田一(まちだはじめ)は普通の高校生です。特別な能力もなく、勉強も運動も平均以下、恐らくあなたが今まで読んできた漫画の主人公像とは大きくかけ離れた存在です。人と接することに直線的な鈍感さを持った主人公です。その一が平凡な日常を自分の主観で分析し物語は進んで行きます。独白が多いのもこの漫画の特徴です。

何もない一(はじめ)に不思議と人が集まります、一を中心として人の輪が作られ、愛情の輪が広がって行きます。漫画らしい「人知を超越したセンシティブな感性の持ち主なのでは?」と読者が一を過大評価しようとすると、タイミングよく「そうではないのか…」なる残念エピソードが挟まれます。しかし、返ってその残念エピソードが引き金となり、一人二人と…、登場人物が一に魅かれて行くように、読者であるあなたもだんだんと一のことが気になって行くと思うのです。

感受の範囲が限定されないリラックス系セリフ


引用:町田くんの世界

漫画で大人の心に感動を

第十六話「流れる世界」は中学時代の同窓会の話です。同窓生で一番のイケメンであるモデルの氷室がスポットライトを浴びるのかと思いきや、人の輪が大きく出来たのは意外と一の方でした。一の人としての魅力、人間力みたいなものをそっと感じるエピソードです。

この回は、高校生活がうまく行かずに心を閉ざしていたクラスメイト・青池の心を一が溶かすという、感動にあふれる回でした。その青池に掛けた一の言葉

「人は生まれてくるだけでもう充分なんだって、価値のない人なんていないよ」

には深いものがありました。青池に掛けられた言葉でもあり、読者にも投げ掛けられた言葉でもあったのかなと思います。漫画『町田くんの世界』にはこのような感受の範囲が限定されないセリフがいくつも出てきます

当の本人、一には「人を説得しよう」とする気持ちなどない…ように描かれています。セリフのピュアさが主人公である一さえ越えてゆく、ここに読者が心打たれる瞬間があるのです。既成の価値観にない読後感の良さがこの漫画『町田くんの世界』にはあります。この漫画をおすすめしたい理由はここにもあります。

漫画家・安藤ゆきの瑞々しい五感


引用:町田くんの世界

大人になっても変わらない難しい恋心

アメリカのテレビドラマ『刑事コロンボ』を知っていますか。実はとびきり有能であるコロンボ警部があえて愚鈍な刑事を演じ、犯人を油断させて事件を次々と解決して行くドラマ。コロンボ警部の現実(切れ者)と演技(さえない男)の隙間を行ったり来たりする姿に視聴者はドキドキさせられたものでした。

それと似た感覚を一に感じることが多々あります。第1巻127ページ。寂しいを寂しいと素直に言えない猪原(同級生の女の子)が恋心から「もっとかまってよ」とうっかり一に言ってしまう。そして後日、冷静さを取り戻した彼女が「あれ嘘だからさ、忘れてね」と笑って言う。


引用:町田くんの世界

全てを飲み込む無垢でストレートな台詞

その時の一の独白

「あの言葉を忘れろと言われてうのみにするほどバカじゃない」

は、この漫画で初めて見せた彼の鋭さでした。彼は漫画の中で「滑稽」と「確信」を見事に揺れ動いています。「何やら含まれているキャラクターなのでは?」と読者がそれぞれの一像を広げ始める瞬間です。漫画家・安藤ゆきの持つこの瑞々しい五感は素晴らしいです。第一巻を読んだだけで、大人のあなたもきっと一を気になり始めると思うのです。

漫画「町田くんの世界」は日記のようなスピードのつづり


引用:町田くんの世界

漫画で描く「恋の手前の気持ち」は大人も歯痒い

全編を通して一と猪原の淡い恋の手前の気持ち」が描かれています。第5巻「よく分からない…恋……?」、母親に質問を投げ掛けるスタイルで一が恋を自問自答するシーンがあります。「変よね、変な気持ちよねえ」が母親の出した答え。猪原がいい人過ぎて、一が鈍ぶ過ぎて、読者の「あー、もー。乙女心を分かってないなあ」が最高に心に気持ちいい一連です。こんなやり取りに鮮烈なポエジーを感じるのはそこに作者の言葉がないからです。何も考えさせられない読者の贅沢な時間がここにもあります。

読み進めても次の物語への期待感は他の漫画に比べれば、もちろんいい意味で、高まることはありません。ただ、正直、物語の先は少しだけ気になります。まるで他人の日記を偶然目にしてしまったような、「その次の日」を知りたくなる気持ちです。一の「恋の手前の気持ち」がだんだんと具体化する(恋の形になって行く)のですから…光り過ぎて見えない向こう側には何があるのだろうと目を細める感覚でしょうか。

一が自分の気持ちを恋だと気付いたのはずっと後になってからです。第7巻54ページ

「猪原さんに恋をしてて怖いんだ」

と初めて自分の恋を認識し、二人の友人に告げるシーン。近いのか遠いのか分からない猪原との透明な距離に「恋」という答えが出た名場面です。こんなドラマチックなシーンに少しも漫画ぽさがないのも不思議でなりません。

大人の心に刺さるキーワードとハイセンスなセリフ

引用:町田くんの世界

 

「ゆっくりいこうよ」

漫画『町田くんの世界』では、何度も出て来るキーワードです。この言葉には何も期待しなくていい心地良さがあります。仕事のスケジュールが埋まらないと不安になるワーカホリックや、交友関係欄に何も予定がないと寂しく感じるな「プチ他人依存」の方には、ぜひこの漫画を読んでこの言葉の真意を読み解いてもらいたいです。


引用:町田くんの世界

「モノサシはひとつじゃないよ」

第3巻に出て来る勉強至上主義の小学生・桐谷育に掛けた言葉。「人の冷たい心を温かく溶かしてやろう」など一が思うはずもありません。そんな器用さがあればもっと早くに恋は成就しているはずです。私性を越えて伝言される言葉、後は相手の受け取りようなのだなと、ふと感じたセリフでした。

「恋してもらえたなんて知ったら、うれしいにきまってるよ」

第5巻149ページのセリフ。恋に悩む自分から告白できない引っ込み思案な女の子・長崎美希に掛けた言葉です。特別かっこいいことは言っていませんが、一が口にすると不思議な湧出感があります。

恋に関する一の自問自答はラストシーンまで続きます。第7巻57ページ「いいところなんて何ひとつないのに(どうして自分のことを好きになってくれたのだろう?)」と人並に悩む一が、この段階ではすでにこの上なく愛おしくなっています。恋愛漫画は別れたり、けんかをしたり、恋のライバルが現れたりと、わりとハラハラ要素がたくさん絡み合ってドラマが展開されますが、一の恋は猪原との一対一、一が恋を理解できていないのである意味0.5対1の、異質なラブストーリーだと言えます。

最後に

物語は最終的には救いがちゃんとあって、一が家族に猪原を紹介して…で終わります。感動のラストシーンはあなた自身でページをめくって頂ければ。さて続きは…と思ってもこれで完結です。一抹の寂しさとともに、「何も考えることなく」町田一の青春の一ページに参加できた喜びでいっぱいになると思います。

「いい漫画に出会えたな」ではなく「いい時間を過ごせたな」と思える漫画。そして、なぜか人におすすめしたくなる、そんな大人に読んで欲しい漫画です。漫画『町田くんの世界』ぜひ!

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ハイセンス感を邪魔することのないよう頑張ります!いつか『独身貴族』を読みながら海外を旅行したいです。

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