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独身貴族おすすめ大人の漫画「花田少年史」とは
引用:花田少年史
新装版 花田少年史(全5巻)
予算 3,390円(税別)
大人の漫画はここから始まった
引用:モーニング公式サイト
『花田少年史』は1993年にミスタ―マガジンに発表され、1995年まで連載されました。(ミスタ―マガジンは休刊し、単行本は現在モーニングで発売されている)
その後、2002年にアニメ化され、ノスタルジックな風景や作風で話題を呼び、2003年の東京国際アニメフェアテレビ部門最優秀作品賞及び、第8回アジアテレビジョンアワード長編アニメーション部門優秀賞作品となりました。
花田少年の背景・設定とは
引用:花田少年史
『花田少年史』とは、小学生男子、花田一路(はなだいちろ)を主人公とした物語で、1970年代頃の田舎町を舞台にしています。
一路は小学三年生になる腕白少年で、ヒキガエルを一槽式洗濯機のローラーに挟んだり(昭和30~40年代の洗濯機の脱水器)、犬の体に落書きをしたりするなど、悪戯ばかりしては母親を困らせています。
そんな一路はある日、自分の悪戯に腹を立てた母親の叱責から逃れようとしたがために、オート三輪にはねられ、頭に9針縫うほどの大怪我を負ってしまいます。
一路は奇跡的に一命をとりとめましたが、彼はその時から幽霊が見えるようになります。
一方、幽霊たちは一路が自分の姿が見えると分かり、自分たちがやり残したことや、心残りになっていることを一路に頼むようになります。
こうして、一路は半ば幽霊たちに強制されるように、渋々頼みごとを聞くようになるのです。
幽霊の見える少年、「花田一路」の災難
大人を引き込む漫画『花田少年史』
引用:花田少年史
『花田少年史』の物語は、田舎に住んでいる少年が幽霊の頼みごとを聞いて、それを解決するお話です。
特に大事件に発展するわけでもなければ、とてつもない極悪人が出てくるわけでもありません。
頼み事も些細なことばかりです。
しかし、そんな些細なことでも幽霊たちにとっては大事なことであり、この世の未練の元なのです。
例として、単行本第1巻に収録されているエピソード(第3話)、「ユキ」という少女の幽霊にまつわるエピソードを紹介しましょう。筆者のおすすめのエピソードでもあります。
このユキという幽霊は病弱で、人生のほとんどを病院で過ごしていました。
ある日、彼女は知り合いになった大工の青年、青田清司に頼んで、一緒に夜祭でかけたのです。
自由に外を出歩けなかったユキにとって、それはかけがえのないひと時でしたが、ユキの体調は悪くなり、そのまま亡くなってしまいます。
この時ユキは、夜店で清司からあるものを買ってもらいました。
夜店で買った品物なので些細なものなのですが、それは彼女が初めて恋した男から貰った大切な物なのです。
一方、ユキの父親は清司のしたことが、ユキの病状を悪化させた原因と思って、彼をなじり、彼女にあげたはずのあるものを彼に叩きつけたのです。
清司はこの一件で心に深い傷を負ってしまい、やさぐれてしまったのです。
そして、ユキにあげたものを形見として持っていたのです。
ユキは清司に立ち直ってもらいたい一心で、清司の心を縛り付けている自分の形見を持ってきてほしいとお願いをしたのです。
引用:花田少年史
このように、基本的には幽霊の頼み事は些細なことなのですが、当の本人とってはとても大事なことなのです。
一方、些細な頼み事とはいえ、一路は元気が取り柄なだけの普通の小学3年生なのです。
やれることもできることも限られています。
ユキに頼まれて一路は清司のもとに訪れるのですが、小学3年生にとって、知らない大人の家に行くことだけでも勇気がいります。
おまけに本編に登場する清司は、刺青をしたチンピラ風の青年だったのです。
しかも、死んだはずのユキのことを口にしたので、一路は清司に胸倉を掴まれてしまいます。その時、一路は恐ろしさのあまり失禁してしまったのです。
このやり取りが、ギャグとして表現されていますが、一路にとっては災難としか言いようがありません。
つまり、この漫画は幽霊たちの思いや未練にまつわるドラマと、それに巻き込まれる小学生のドタバタギャグが入り混じった作品と言えます。
独身貴族になった「少年達」におすすめしたい、昭和の田舎町に生きる大人達の物語
現代の大人たちがタイムスリップできる漫画
引用:花田少年史
本編では、漫画の舞台になっている時代をはっきりと明言している箇所はないのですが、周囲の小道具を見てみると、70年代くらいの昭和の田舎町であることはわかります。
例えば、オート三輪は70年代にはすでに販売はされなくなっていますが、オート三輪の積んでいる荷物をよく見てみると材木です。
実はオート三輪は小回りが利いて、狭い場所の荷物運びには最適だったので、70年代初期の林業には欠かせなかったのです。
さらに、主人公一路の住んでいる家の洗濯機はローラーで脱水をしています。
これは昭和30年代から40年代にあった洗濯機の特徴です。
当時の大人と現代の大人が交わることができる漫画
引用:花田少年史
『花田少年史』が連載されたのは1993年です。
この時代は70年代に少年であった人達が大人になっている時代です。本編の主人公は小学生ですが、連載されたのは青年誌です。
つまり、花田少年史は、70年代頃「少年」であった人たちへ向けた漫画であるといえます。
何故なら本編で語られるエピソードは、一路だけでなく、周囲の大人たちにもスポットが当たっているからです。特に独り者が登場するエピソードが多いようです。
例えば第2巻で、一路の親友、壮太の母と一路の同級生の女の子 桂のお父さんが結婚するエピソードが語られます。壮太の母はシングルマザーで、桂のお父さんも独りで桂を育てたのです。
独り身で子供を育てるなんて大変そうですが、辛そうには見えません。
なぜなら、助けてくれる人たちがいるからです。
2人の縁談を取り持ったのは近所のおばあさんです。
そして、結婚式や引っ越しも近所の人たちが協力してやってくれたのです。
婚活という言葉がない頃、縁談は世話焼きの隣近所の人間がやってくれました。
昭和の田舎町では独り身でいる人がいたら、何かと世話してくれたり、助けてくれる人が居たということです。
つまり、この回で分かるのは、昭和の時代には独り身でいても世話を焼いてくれたり、何かと手助けしてくれる人たちが多かったということです。
現在、冠婚葬祭は企業が取り持つことが多いのですが、費用が高く、現在では結婚式をやらない人が多くなっています。
しかし、昭和の時代は近隣の住民たちと協力して、ささやかでも楽しい式を挙げることができたのです。
今の時代には見ることのできない、昭和の時代ならではの利点と言えるでしょう。
全5巻まとめて購入。大人の視点で楽しむ少年時代
引用:花田少年史
『花田少年史』は主人公である一路だけを物語る漫画ではなく、少年時代に戻って、昭和という時代や、あの時代に生きていた大人達のドラマを見てみる物語なのです。
つまり一路は主人公でもあり、大人になった読者たちに、あの当時にいた大人達のドラマを物語る語り部でもあるのです。
そこには少年時代にはわからなかったり、見ることのできなかった大人たちの悩みや意外な一面、そしてドラマを見ることができます。
大変だったこともあれば、現代では失くしてしまった美点や利点を見ることができます。
現代という時代に少々疲れてしまった独身貴族の方は、『花田少年史』を手に取って、読んでみてください。
漫画のページをめくれば、あの古き良き昭和の悪ガキ一路の案内によって、あの懐かしの田舎町に行くことができます。
そこには現代にはない「活気」にみちたあの懐かしいの空間がまっています。
少年の視点で見ても、大人の視点でみてもこの漫画は面白いのです。
漫画は全部で5巻まで出ているので、まとめて購入するには最適の漫画です。まずはリラックスしてあの昭和の世界を楽しみましょう。